4月 09

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東京都写真美術館・聖地巡礼展の巨大プリント「ライラトル・カドルの礼拝」は、地上85メートルのミナレット(光塔)のテラスから撮影したものです。この写真と向き合っていると、”神の視座”とも言えるあの場所から、100万人が心を一つにして繰り広げる祈りの姿を見下ろして抱いた”畏れ”に近い感情がまざまざとよみがえってきます。これからの写真家人生で、これほどの圧巻に立ち会う機会は2度と無いであろうと、しみじみと思います。(日本写真家協会・田沼武能会長と)

 

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そしてもう一方は、六本木ミッドタウンのFUJIFILM SQUAREで開催中の「写真で旅する世界遺産展」 http://fujifilmsquare.jp/ の「等身大の射手」の等身大プリント。約5000年前、サハラが緑に覆われていた時代に描かれたものですが、1978年に撮影して以来、身長1,8メートルのこの射手と30年ぶりに再会を果たした気分です。麓のオアシス・ジャネットで大量に買いこみ、石のように硬くなったフランスパンを石で砕き、スープで戻し流し込みながら、壁画探索に明け暮れた若かりし日々がよみがえってきました。

(壁面構成デザイナー・佐村憲一さんと)

4月 01

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以下は、現在、東京都写真美術館にて開催中の「聖地巡礼」展の挨拶文です。写真展図録には収録されておらず、観覧者の中に、そのことを残念がっていた方々がいたためここに収録いたします。

聖地をめざす人々

イスラームの聖地であるアラビアのメッカから、カトリックの総本山ヴァチカンへ。熱烈な仏教信仰が息づく極限高地チベットから、エチオピアとアンデスに受け継がれた独特のキリスト教世界まで。そして、アジアの信仰の源流であり、多彩なインド世界を貫く、祈りの川ガンガー(ガンジス)へと、地球上に息づく濃密な宗教聖地を巡ってきた。
私が宗教と向き合うきっかけは、20代半ばで訪れたサハラでの体験だった。乾燥の極地に点在するオアシスで暮らす人々にとって、生命線はひとつの泉である。枯れることのない泉こそは神の賜物であり、生かすも滅ぼすも神の意志ひとつであるとする明解な信仰がそこにはあった。人々の祈りには、日々、無事に生かされていることへの感謝が滲み出ていた。
一方で、砂と風と星々の煌めく砂漠は私を魅了した。地平線のなかでキャンプした日々、満天の星空を眺めながら、この天空はるかに宇宙的スケールですべてを司るなにかが存在するかも知れぬ、という思いを受け入れるのに違和感はなかった。聖地とは、超越した或る存在と向き合い、心をひらく空間である。その点では私がこれまで巡ってきた土地は、私自身にとってもかけがえのない聖地であったと言える。祈りのかたちは様々であるが、巡礼を終えて達成感に輝くその表情は宗派を超えており、心の琴線にふれた充実感にあふれていた。
一方で私たちの社会は、この数十年来、生産性の亡者と化し、宗教的な空間を非合理なものと決めつけてひた走ってきた。その結果、世代を超えて受け継ぐべきことの核心が見えにくくなっている。とくに最近頻発する、突発的な心の崩壊によって引き起こされた事件の異様さを突きつけられるたびに、生きる枠組みが容易に見えなくなっているこの社会の難しさを思い知らされる。
宗教について語るとき、私は”宗教”を”家族”という言葉に置きかえてみれば平易に理解できるのではないかと思う。濃密な家族の絆が社会の核となっているイスラーム世界を見ているととくにそう思わされる。どの宗教であれ、教えていることは、世代を超えて受け継がれてきた生きるエッセンスの集積そのものなのである。
40年にわたって撮り続けてきたこれらの作品を、混迷の現代を映す、ひとつの合わせ鏡としてご覧いただければと思います。

野町和嘉

野町和嘉オフィシャルサイト

3月 12

FUJIFILM SQUARE(URL: fujifilmsquare.jp )にて、「写真で旅する世界遺産 」展が開催されている。

第1部 自然遺産編 2月27日-3月25日
第2部 文化遺産編 3月27日-4月27日

● 野町和嘉トークショー:4月4日
午後3時-4時半 FUJIFILM SQUARE

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自然遺産編では、私の出品作品は全67点中6点であるが、文化遺産編では、全78点中35点と半数近い。これまで世界遺産をとくに意識して撮影してきたわけではないが、地球上に存在する巨大スケールのランドスケープ、一級の文化遺産の大半は世界遺産に指定されており、リストアップしてみると、あれもこれも世界遺産だったというわけである。
第2部 文化遺産編では、サハラ、タッシリ・ナジェールの先史壁画「等身大の射手」が、縦3000×横3750という超大型プリントで展示される。射手の身長が1,8メートルあり、それを等身大で見せようというわけだ。
タッシリ・ナジェールを取材したのは、1975年と1978年のことで30年以上も昔のことだ。’78年には、トゥアレグのガイドとラクダ4頭のキャラバンを組み、約一ヶ月間タッシリの山中をくまなく歩いた。先史人と同じように岩陰にキャンプしながら、4″×5″版の大型カメラを使って、約8000年前から描き続けられた先史壁画のすべてを記録した。20代から30代にかけて、体力と好奇心にまかせてサハラを自分の庭のように歩き回ったあの時代が懐かしい。生きものの気配もない、死の沈黙に覆われた極限の乾燥地で遭遇した射手の、等身大の姿との”再会”を楽しみにしている。

野町和嘉オフィシャルサイト